情報収集と非常勤職員

ああ…なんだかもう、海外の図書館の研究会に行ってすごいですねとか、言わないでほしい。恥ずかしい。行きたければ誰でも行けるよ。

新しい技術が日々開発されて、新しい情報が毎日出てくる。
最近Twitterを始めたけれど、図書館の情報だけでもやけに盛り上がっていて、ついていくのが大変で、すでに離脱したいと思ったことがあるくらいだ。といっても、別に離脱しなくても、アクセスせずに放っておくことは可能。今のところ、これが必須の情報源とは思わない。まだみんな、ためしに使ってみている段階に見える。

Web2.0の技術の発展の恩恵で、情報を発信する人が増えて、それをまとめるブログなどもあるし、図書館とその周辺の情報をRSS等使ってチェックする。というのは、図書館員として当たり前の情報収集と私には思える。それどころか、それにプラスアルファしていかないと意味がないようにさえ思える。といっても、怠け者なので、きちんきちんと追っていけてるわけじゃないけど。それでも「図書館猫って何ですか?」とか「Twitterって何ですか?」と無邪気に言ってしまえる図書館員は怠け者なのではなく、単に何も情報を追ってないんだということはわかる。


さて自分の職場を見渡すと、そんな活動をしている人も、するべきだと思っている人もいない。ということは、私の情報収集行動は必須ではないのか?ううん、そんなことはない。私は私の信じた道を。職場の人との意識の溝は、どうやっていけばいいのかというと、私は私の知りえた情報を、みんなと共有しようと努力するくらいしか。情報が多すぎて、共有するのは一部になるけれど。


かつて一緒に図書館司書を目指して勉強した友人に先日会った。彼女は今は某国立大学法人の図書館で非常勤職員をしている。結婚して子供を産み、今は育児が生活の中心で、図書館で5年以上も同じ場所でやっていると自分が一番古株になってしまって、すっごく仕事は気楽だという。

友人と私の図書館の非常勤の人たちとは似ていると思う。向いている方向が私と全然違う。人生の比重が仕事(図書館)以外のところにあるので、仕事的には楽な場所にいたいんだと思う。プロフェッショナルになりたいとか別に思ってない。あるいは長期間勤めていることが一種のプライドになっていて、経験=プロフェッショナルと思っている…仕事中に漫然と身につけたことだけでプロフェッショナルになれる?そんなに甘くないでしょう。

昨日は、自分のことでせいいっぱいなのに、どうやってこのような意識を持つ非常勤さんたちを教育していったらいいのかと思っていたけど、今は、レファレンスや込み入った検索なんかは、全部正規職員に通すか報告してもらうように仕組みを作りなおそうかなと思っている。利用者のため。

世の中にはプロフェッショナルを目指す非常勤の人もいると思う。でも私の職場にはそういう人はいない。また、そう言う人たちのモチベーションを上げるのは、私の役割ではない。と思う。

医学情報サービス研究大会の反響を集めたくなった

ARGの岡本さんが、ARGカフェの反響をまとめておられるのがおもしろかったので(http://d.hatena.ne.jp/arg/20090629/1246283127)真似をして、医学情報サービス研究大会についてブログで触れられているものを集めてみようとしたら、今のところはあまり書かれていないことがわかった。やはり「書いてください」と言われないとわざわざ書かないものかもしれない(私も含めて)。そこで、自分で書いた。2日目はどんなだったのだろう。誰か行った人はどこかに書いてくれると嬉しい。

探してみると、2日目の継続教育コースの講師をされていた、聖路加看護大学の中山和弘先生が、パワーポイントを公開しておられた。

しかし、本当ですか。日本語ブログ記事が全世界の37%を占め、英語36%以上に多いって…。そんなに日本人がブログが好きだったとは、そんなに世界的に多いとは知りませんでした。

一般演題II  情報の分析・統計

05. 開発途上国研究者の情報生産と利用―医学分野におけるHINARIイニシアチブが与える影響

城山 泰彦(順天堂大学図書館)
http://mis.umin.jp/26/program/oral-05.pdf

WHOやHINARIについては、相当多くのことがWeb上に公開されているようなのだが、英語だし、面倒だから…とついアクセスせずにしまってあることをいろいろ調べて教えてくださるというのはいい機会。

途上国に対して無料で電子ジャーナルを提供するというのは、素晴らしい考え。しかし、「アフリカ5 か国における医師の主要なInternet アクセスポイントは,Internet Cafe が47%で最も多かった。」とのこと。個人でコンピュータを持つのではなく、大学や病院でアクセスするのでもなく、インターネットカフェ。中身が提供されても、アクセスするマシンが全然足りていないのではないだろうかということが気になる。でも、HINARIによって学術文献の生産量が増えていることがわかったということで、充実感はあった。

06. MIS参加者に関する計量情報学的分析

小野寺 夏生(筑波大学)
http://mis.umin.jp/26/program/oral-06.pdf

Lotkaの法則の式は次のとおりである。 f (X) = C / Xα

などと言われては初めから聞く気を無くしそうになるが、それを十分予測して、私たちの興味を引く話題を導入部分に挟まれるところはさすが先生という感じだった。それにしても、この大会の参加者に関する分析をしてみようと考えるのは面白い。今回が26回目であるが、25回すべてに出席していた人は1人だけとのことだった。その方は、もちろん今回も出席。それだけでなく、発表もされていた。

07. 総合医学、内科誌Impact Factor上位3誌の被引用回数とMEDLINE Publication Types の2002-2006年調査―前向きコホート研究

三浦 誠(九州大学情報システム部情報基盤課デジタルライブラリー担当)
http://mis.umin.jp/26/program/oral-07.pdf

あまりに盛りだくさんな内容で、頭がついていかなかった。みんな理解できたのだろうか。私だけ?

大変な情熱を傾けて研究されたということと、発表者が大変感じがよくていい人なのだろう…ということはひしひしと伝わってきたのであるが。

スライド上では細かい表がくるくると変わっていって、どこを見たらいいのかわからず、前回発表された調査と比較しておられたようなのだが、前回の調査の内容は何だったのだろう…とわからないままだった。これは、もっと抄録を読み込んでおくべきだったか。

08.テキストマイニングによるアスベスト研究の分析

青木 仕(順天堂大学図書館)
http://mis.umin.jp/26/program/oral-08.pdf

及川さんと同様に、日常感じた疑問を調査研究に向ける、ということの大切さをいつも教えてくださる大先輩。アスベストはすでに使用が中止されているし、何年か前に流行った病気に関するキーワードにすぎないのでは、という印象を持ったが、それは間違いとわかった。現在もアスベストを使って作られた学校などがそのまま放置されているし、そもそもアスベストを吸い込んでから中皮腫などの深刻な病気が表れるまでには何十年というタイムラグがある。現在も、そしてこれからも、中皮腫になって病院に来る人が次々と現れる可能性があり、決して過去の問題ではないのである。

順天堂大学の病院では、アスベスト外来が設置されているとのことだった。

09. 日本の新聞に取り上げられる科学論文の傾向について ―医学論文を中心に

大谷 裕(東邦大学医学メディアセンター)
http://mis.umin.jp/26/program/oral-09.pdf

何でこんなことを調べようと思ったんだろう。目の付けどころが面白い。本当に人の研究発表というのは面白い。

一般の新聞で、「○○大学の○○研究グループが○○について明らかにしたことを『サイエンス』誌に発表した」などという記事が時々載っているが、実はScienceとNatureについては、新聞等のメディア向けに、プレスリリースを日本語で行っていると聞いて納得した。新聞社の人が、Natureグループの雑誌やScienceなんかを、電子版で毎日チェックしているのだとすれば、結構大変そうだから。新聞を読んでいると、NEJMとかLancetなんかもたまに載っているように思うけど、そちらは英語のプレスリリースがあるのだろう。

科学技術分野の中で、医学分野は最も多く取り上げられる分野だというのには少しびっくりした。やはり自分の体のことや健康のことだから、興味を持たれやすいのだろうか。また、遺伝子関連のニュースが多いことも挙げられるだろう。

プロダクトレビューでは、各社5分で業者さんがPR合戦を繰り広げるのだが、やはり営業さんのトークの中には素晴らしいものがあり、これも勉強になる。あれこれ紹介しすぎて自爆してしまう人、営業担当者ではないのかとりとめのない話をして時間切れになる人もいるが、制限時間内にぴたりと商品のPRをまとめてくる担当者の話はつい聞いてみたくなる。また、ただ製品を紹介するだけでなく、自社製品に関する調査結果などの付加価値を内容に入れている発表については素晴らしかった。

一般演題I  病院図書館

01. JHLAのチャレンジ ―病院図書室担当者のスキルアップのために

大沼 由紀子(日本病院ライブラリー協会)
http://mis.umin.jp/26/program/oral-01.pdf

今回は病院ライブラリー協会の人が、3人ほど演題を発表されていた。

この協会の活動をあまり知らなかったので、今回知ることができたのはよかった。病院図書室の人たちは、多くの人がひとり職場ということからか、アクティブで自立している人が多いと感じる。大学図書館の人間である自分がデクノボーみたいに思えてしまうことがよくある。

私はこの協会に所属することはないけれど、ひとり職場の人たちの集まりで、ほとんどみんな女性で、300人もの会員がいる全国組織を運営していくのは大変なことに違いない。会員は多いほど組織の力も強くなるから、今回の発表も、協会の中で決めた活動の一環なのではと思われた。発表したのは若い人で、発表することは勉強にもなるからいいけれど、何か自主的に発表しているというよりは「割り当てられている」という感じがして、「結構病院ライブラリー協会って先輩からこういう発表が課されたりするのかなぁ。そうだとしたら大変そう…」という若干マイナスの印象を抱いてしまった。もし会員を増やすことが目的としてあるのだとすれば、効果があったのかどうか。

02.病院の図書館員が認識され、理解され、必要とされるには ー木に登って森を見ると・・・・

山崎 むつみ(静岡県立静岡がんセンター 医学図書館)
http://mis.umin.jp/26/program/oral-02.pdf

山崎さんは穏やかで落ち着いた声の方だが、熱意と話しぶりに思わず引き込まれた。

民間を経験した人の視点で、病院の中で図書館司書がプロとして認められていくためにどうしたらよいのか、さまざまな考えを巡らせておられることがわかった。

病院での決めごとが「診療報酬・保険点数」を中心に動いていくということ。

がん情報サービス
http://ganjoho.ncc.go.jp/public/index.html

このサイトではがんに対する詳しい情報が掲載されているけれども、この病気の情報を提供するという場面において、図書館員が協力していた様子はないということ。

03. 患者のニーズを反映した情報整備のためのPilot調査 ―乳癌患者会ウェブサイトの分析

及川 はるみ(聖路加国際病院 教育・研究センター 医学図書館)
http://mis.umin.jp/26/program/oral-03.pdf

とても刺激を受けた。日常仕事をする中で感じた疑問「患者にどのように情報を提供していくべきなのか?」ということを調査しようと思い立ち、手法を考えて調べてみました、というのは、図書館員にとっての理想的な研究の始め方ではないだろうか。

04. JHLA 患者医療図書サービス支援事業報告

関和美(日本病院ライブラリー協会)
http://mis.umin.jp/26/program/oral-04.pdf

第26回医学情報サービス研究大会

http://mis.umin.jp/26/program/index.html
今年の医学情報サービス研究大会は、平成21年7月4日(土)〜5日(日)の日程だったが、1日目だけ参加した。場所は東京。北里大学の白金キャンパス。

大学の最寄駅だけ覚えて新幹線に乗った。地下鉄の広尾駅から歩いて行く道は、大使館があったりおしゃれなお店が並んでいたりしてとても雰囲気のいい道で、つい20分ほど目的地に着かないことを気にせずに歩いて、気づけばまったく違う場所にいた。

すぐタクシーに乗ったが、タクシーの運転手さんも北里大学の場所を知らず…ふたりでカーナビを見て推測したり、私の携帯電話でリサーチしたりしているうちにすっかり遅れて、1つ目の継続教育コースのプログラムは半分以上終わっていた。

しばらく脱力していたが、せっかく来たんだからと、次の一般演題からはまじめに聞くことにした。

PubMed講習会

先週は授業がいくつもあったが、その中にPubMed講習会があった。

PubMedは、米国の医学図書館が作成している、医学・薬学・看護学・獣医学などを含むライフサイエンス分野のデータベース。米国の政策によりインターネット上に無料で公開されており、コンテンツの充実は言うに及ばず、検索しやすさ、データの新しさ、新しい機能を次々展開するなど、素晴らしいもので、医療従事者には欠かせないデータベースといえよう。

PubMed
http://pubmed.gov

これらの検索方法を説明する講習会という場こそ、図書館職員の専門性の見せどころ…なのであるが正直、こちらには医学知識が欠如しているのだから、とても緊張する。専門図書館の図書館員は、その専門分野の主題に関する知識を持つことが望ましいが、私はちゃんと勉強している図書館員だとはいえない。でも、わかっている範囲で精いっぱいやるしかない。このデータベース特有のシソーラスについて勉強し、検索機能についていえば、その辺のお医者さんよりはきっと詳しい。そう、こういう日のために、先月は本場米国の医学図書館協会の総会まで行ってきたのではないか。

事前に申し込みをしてきた人に、何を知りたいのか、どんな検索をしているのかアンケートを取ったところ、多くの人は、自分の思いついたキーワードを検索ボックスに入れるという、Google的な検索方法をしているということがわかった。

平日の夕方、図書館に集まった参加者は30人。医師がほとんど。医師不足は現実であって忙しいはずだが、常に最新情報を追っていかなければならない仕事で、そのためにPubMedをみんな使おうとしていて、でも検索方法がわからないと思っている人が多いということか…。
医師は一生、自分の中の医学知識をアップデートする必要があり、そうしてもらわないと命にかかわる。ということは、私の伝える情報によって、誰かの運命を左右することになるかもしれないということである。責任重大!

・検索結果が多すぎたときは?また、少なすぎるときは?
・思ったような内容が検索結果に出ていないときは?
・不要な情報を検索結果から除くには?
・電子ジャーナルですみやかに本文を見るには?
・MeSHを使って検索したいが?

というような具体的な疑問に応えるやり方で講習を進めたが、とてもわかりやすかったと、講習を聞いていた図書館側の人たちには好評だった。アンケートによる評価もまずまずで、ひとまずほっとした。

しかし何といっても、当日まだ講習会の内容ができておらず、ぎりぎりまで内容や検索例を考えているのは相変わらず。ここを何とかしなければ、いつか大きな失敗をやらかす日がくるに違いない…。
そして、主題知識の少なさから来る不安については、実際勉強するしかない。せねば。しましょう。